パンダのしっぽは白?黒?短いしっぽの長さと使い道
パンダのしっぽは白でしょうか、黒でしょうか。いざ聞かれると、すぐには答えにくい問いです。
この記事では、中国のパンダの研究機関や日本の動物園の言葉をもとに、しっぽの色の答えと、黒だと思われやすいわけを紹介します。短いしっぽの長さや形、ふだんの使い道、赤ちゃんのころの姿、恋の季節のしっぽ、レッサーパンダとのちがいもあわせてお伝えします。
パンダのしっぽは何色?答えは白
答えは白です。中国のパンダの研究と繁殖の中心になっている中国大熊猫保護研究中心は、解説の中で「大熊猫的尾巴是白色的。」と書いています。パンダのしっぽは白い、という意味です。
和歌山のアドベンチャーワールドのパンダチームも、答えは同じです。黒いのは耳と目のまわり、背中から前足と胸にかけて、後ろ足の付け根から下。そのうえで「しっぽは白いんです。」と説明しています。
中国の成都市動物園の飼育員は、もっとはっきり言い切ります。「黒は間違い。パンダのしっぽはずっと白」。
ただ、どのパンダも白一色というわけではありません。成都の新聞・華西都市報によると、しっぽの先に少し黒い毛があるパンダもいます。
そもそもパンダの白い毛は、真っ白ではなく黄色みがかっています(中国大熊猫保護研究中心の解説より)。成都市動物園の飼育員によると、大人のパンダの白い毛には、洗っても落ちない茶色みが出てきます。
なぜパンダのしっぽは黒だと思われやすいの?
成都の街で、5歳の子が投げかけた疑問
2020年10月27日、福建から成都に来ていた5歳の子が、繁華街の歩行者天国でお母さんに質問をしました。抱いているパンダのぬいぐるみはしっぽが黒いのに、商業ビルの屋上にある大きなパンダはしっぽが白い。そのちがいが気になったのです。まわりの大人も、すぐには答えられませんでした。
これをきっかけに、中国・四川省の新聞、四川日報が取材を始めます。成都の街や土産物店に並ぶパンダも、しっぽが黒いもの、白いものとまちまちでした。
翌28日の午前、四川日報の公式SNSで投票をしたところ、1万人近くが参加しました。結果は黒が41%、白が39%、答えられないが19%。黒と白がほぼ同じくらいに分かれています。
四川日報は、投票とは別に、成都の街でお年寄りや若い人、子ども、外国人に聞いて動画にしました。こちらでは、黒と答えた人が90%にのぼりました。聞く相手や聞き方で、答えはずいぶん変わりました。
成都市動物園の飼育員が挙げた、見まちがえるわけ
なぜこれほど黒だと思われるのか。成都市動物園の飼育員は、3つのわけを挙げています。
ひとつ目は、しっぽが短くて見落とされやすいこと。ふだんはおしりにぴったりくっついているので、なおさら目に入りません。
ふたつ目は、パンダが座ったり寝転んだりするのが好きなこと。そのぶん、しっぽに泥がついて、灰色や黒に見えてしまいます。
3つ目は、パンダのアニメやキャラクター、ぬいぐるみの多くが、しっぽを黒くしていることです。わたしたちは、その姿のほうを見慣れているのです。
デザインする人が黒いしっぽを選ぶわけ
同じ記事では、パンダをデザインする側の見方も紹介されています。コマ撮りアニメの工房を主宰する人は、画面での見え方を理由に挙げました。白は画面でいちばん目立つ色なので、しっぽを白にすると、顔などの大事な所から目をうばってしまう。黒なら体の続きに見える、という考えです。
日本でもくり返される、しっぽの色の問い
日本でも、この問いはおなじみです。2023年2月2日に放送されたラジオ番組では、パンダについて書いているライターが、しっぽは白だと答えました。よく聞かれる質問だと言い、いまだにグッズで黒いものがあるけれど、それは間違いだと話しています。2020年7月31日には、テレビの動物番組のクイズにもなりました。
さかのぼって2004年には、大阪の国立民族学博物館の特別展に、来場者が自由に書きこめるパンダ・ノートが置かれていました。そのノートにも、しっぽは白か黒かという問いがいくつも寄せられています。「パンダのしっぽは白いって知ってた??」という書きこみもありました。
パンダのしっぽの長さはどのくらい?形は?
パンダのしっぽは、体に比べてとても短いものです。ただ、長さは資料によって幅があります。
上野動物園の紹介では、鼻先からおしりまで約150cmの体に対して、しっぽは10〜15cm。中国の林業の出版社が出したパンダの問答集『大熊猫201問』では、約10〜12cmです。
成都大熊猫繁育研究基地(成都にあるパンダの繁殖・研究の施設。以下、成都の基地)は、大人のしっぽを約20cmとしています。
形にも特徴があります。同じ基地によると、しっぽは付け根が太くて厚く、毛はとてもふわふわしています。
体に比べると短いしっぽですが、ほかのクマとくらべると、話は少しちがいます。アメリカのシカゴ自然史博物館の研究者が1964年にまとめた、パンダの体のつくりの本も見てみます。しっぽは比較的小さいものの、どのクマのしっぽよりも長く、ずっと重いと書かれています。根元は上下に平たく、幅は約35mm、厚さは約25mm。しっぽの骨は、全部そろった1体の標本で11個でした。
短いしっぽは、ふだん何に使っている?
1964年のその本は、当時の見方として、しっぽには働きがないと書いていました。いまでは中国の研究機関などが、しっぽの役目を説明しています。中国の石家荘市動物園は、体を安定させてバランスをとるのにも使えると紹介しています。ここでは、おしりを守るふたと、においの印をつける刷毛の役目を見ていきます。
おしりを守るふたの役目
しっぽの付け根には毛のない所があり、そこに肛門があります。まわりには、においを出す腺もたくさんあります。
見落とされやすいわけとして挙げた、おしりにぴったりついたしっぽ。中国大熊猫保護研究中心によると、じつはこれが、肛門や腺を守るふたになっています。華西都市報によると、うんちをする時や、においの印をつける時のほかは、しっぽを下げておしりにつけています。汚れや虫、アリから守るためです。
においの印をつける刷毛の役目
しっぽには、刷毛(はけ)のような使い方もあります。腺から分泌物が出ると、しっぽであちこちに塗り、においの印をつけるのです。中国大熊猫保護研究中心も『大熊猫201問』も、そう説明しています。
大人のパンダはなわばり意識が強く、切り株や壁、地面、よく通る所に、しっぽでにおいを塗って印をつけます。ほかのパンダはそれを知って、自分からよけていきます。
大熊猫国家公園は、野生のパンダがすむ国立公園です。2023年2月28日、四川省眉山の区域にある赤外線カメラが、しっぽで木ににおいを塗る野生のパンダをとらえました。
四川省の王朗自然保護区で、恋の季節にパンダが集まる場所を調べた2005年の論文もあります。見つかったにおいの印の木は24本。その96%は、樹皮がざらざら、またはややざらざらした木でした。
印の75%は肛門のまわりの腺の分泌物で、残りの25%はおしっこでした。分泌物の印は、地面から印の真ん中までの高さが平均51.8cmです。
アメリカのサンディエゴ動物園によると、においはかなり強く、人の鼻でも約30cm離れて分かるほどです。ろうのような、くさいにおいだそうです。においの印をつけた木や岩は、町の掲示板のようなもの。ほかのパンダは、つけたパンダの性別や年齢、繁殖の状態、地位、だれなのか、つけてからどのくらいたったかまで分かります。
アメリカのスミソニアン国立動物園でも春になると、宝力(バオリー、オス)と青宝(チンバオ、メス)の2頭が、しっぽを上げて丸太や岩などにおしりをくねらせ、においをつけます。
しっぽを振って合図を送ることはできない
においの印は仲間に多くのことを伝えます。ただ、しっぽを振って合図を送ることはできません。華西都市報は、犬のようにしっぽで気持ちを表すことはできないと書いています。スミソニアン国立動物園も、しっぽが短い切れはしのようなので、しっぽでほかのパンダに合図を送れないと説明しています。
赤ちゃんパンダのしっぽは、体の3分の1〜4分の1ほどもある
大人では見落とされがちなしっぽも、生まれたばかりのころは目立ちます。『大熊猫201問』によると、生まれたての赤ちゃんは、毛のないネズミのような姿です。大きな頭に、長いしっぽ。体長15〜17cmに対して、しっぽは4.5〜5.2cmあります。
成都の基地とスミソニアン国立動物園も、生まれた時のしっぽは体の長さの約4分の1と説明しています(スミソニアンでは約5cm)。
同じ基地の上級飼育技術者は、2025年8月、その年に生まれた3頭の赤ちゃんを初めて公開した時に、こう話しました。「多くの人はパンダのしっぽを見たことがないかもしれません。生まれたての小さいころは、しっぽが長くて、透き通ったような感じ。大きくなると幅が広がって、ほうきのように見えます」
しっぽの伸びは、体よりずっとゆっくり
アドベンチャーワールドは、2018年8月14日に生まれたメスの赤ちゃん、のちの彩浜(サイヒン)のしっぽを測って発表しています。生まれた日は全長15.5cmで、しっぽは3.5cm。生後29日には全長32.5cmで、しっぽは5.0cmでした。
発表には「出生時は尻尾の長さが体の1/3〜1/4ほど」とあります。華西都市報も、成長するにつれて、細長かったしっぽが平たく短いしっぽになると紹介しています。厚い白い毛が、長いあいだ座ったり寝たりするうちに押されて、平たくなるのです。
オーストリアのシェーンブルン動物園は、2016年8月に生まれた双子の日記をつけていました。まず目を引くのはとても長いしっぽで、お母さんパンダにはそんな長いしっぽはないと書いています。赤ちゃんは数週間で体のつり合いが変わっていくそうです。
生後1〜2か月になると、しっぽには白い毛がびっしり生えてきます。『大熊猫201問』によると、生まれてから大人になるまで、しっぽの長さは体に比べるとほとんど伸びず、おもに幅が増えていきます。大きな体に比べて平たいしっぽは目立たないため、パンダにはしっぽがないと誤解する人も多いそうです。
長いしっぽは、祖先が肉食動物だったころの名残
赤ちゃんが長いしっぽで生まれるのは、祖先が肉食動物だったころの名残といわれています。アドベンチャーワールドの発表によると、肉食動物は獲物を追って走る時、しっぽでバランスをとります。パンダは竹を主に食べるようになり、長いしっぽが退化したと考えられています。
『大熊猫201問』も、祖先が肉食動物で、生まれたての子は祖先の特徴を多く持っていると説明しています。
恋の季節には、メスがしっぽを上げる
においの印をつける時のほかにも、しっぽを上げる時があります。恋の季節のメスです。
上野動物園は2017年2月、力力(リーリー、オス)と真真(シンシン、メス)を柵ごしにお見合いさせました。鳴き交わしたり、シンシンがしっぽを上げて受け入れ態勢をとったりと、強い発情のようすが見られています。発表には、担当者が長い棒でシンシンのしっぽの付け根を触り、発情の状態を探っている写真も載っています。
2021年3月6日にも、東京都が2頭の同じようすを発表しています。
アドベンチャーワールドでは2020年、良浜(ラウヒン)がオスにおしりを向けてしっぽを上げる、プレゼンティングと呼ばれる姿勢を見せました。そのあと2頭を同居させ、交尾に至っています。
中国大熊猫保護研究中心の繁殖の専門家によると、パンダは気に入った相手には羊のような声を出します。メスは自分からしっぽを上げて、オスに近づきます。
中国の研究者たちが2022年にまとめた論文では、メスがしっぽを上げる行動を、交尾を受け入れる気持ちをいちばんよく表すものとしています。さわられた時に上げることも、自分から上げることもあります。
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レッサーパンダのしっぽとくらべると
名前が似ているレッサーパンダのしっぽは、ずいぶんちがいます。スミソニアン国立動物園によると、長さは37〜47.2cm。赤と淡い黄褐色の輪のしまがあります。
長くふさふさのしっぽは、木の上でバランスをとり、寒さや風から体を守るのに役立ちます。体にきつく巻きつけて、目や鼻を風や雪から守ることもできます。
ちなみに、スミソニアン国立動物園によると、名前は似ていても、レッサーパンダはジャイアントパンダと近い仲間ではありません。
まとめ:白くて短い、働き者のしっぽ
パンダのしっぽは白です。短いうえに、ふだんはおしりにぴったりついていて、泥で汚れることもあります。そのため、黒だと思われやすいのです。
長さは資料によって10cmほどから約20cmまで幅があります。毛のない大事な所を守るふたになり、においの印をつける刷毛にもなります。生まれたばかりのころは体の3分の1〜4分の1ほどもあり、恋の季節にはメスがしっぽを上げてオスに近づきます。
動物園でパンダが背中を向けて座っている時は、おしりのあたりをよく見てみてください。白くて平たいしっぽが、ぴったりとくっついています。
パンダプラネットには、リーリーとシンシンのハートTシャツや、2頭それぞれのアクリルキーホルダー、缶バッジがあります。興味がありましたら、下のグッズもご覧ください。
パンダプラネットのパンダグッズ
パンダプラネットでは、本物そっくりのぬいぐるみをはじめ、Tシャツや缶バッジ、ポストカードなど、いろいろなパンダのグッズを取り揃えています。お気に入りのパンダに出会えるかもしれません。ぜひ一度、パンダプラネットのショップをのぞいてみてください。
出典
- 国家林業和草原局(中国大熊猫保護研究中心)「科普|大熊猫的外形特征」(2024年8月19日)
- 国家林業和草原局(中国緑色時報、『大熊猫201問』より)「认识大熊猫」(2023年6月16日)
- 国家林業和草原局(中国緑色時報、『大熊猫201問』より)「认识大熊猫(四)」(2023年6月28日)
- 国家林業和草原局(成都大熊猫繁育研究基地)「大熊猫的尾巴有多长?」(2025年4月15日)
- 成都大熊猫繁育研究基地「大熊猫科普知识」
- 華西都市報「大熊猫到底有没有尾巴?」(2024年8月27日)
- 川観新聞(四川日報)「熊猫de尾巴到底是黑是白?90%的人都是懵的……」(2020年10月28日)
- 四川在線「OMG!大熊猫的尾巴,真的是白的?!」(2020年10月28日)
- 澎湃新聞「涨知识|熊猫的尾巴居然是白色的,还有这些冷知识你知道吗?」(2020年10月29日)
- 潮新聞(央視新聞)「萌化了 大熊猫新生宝宝“三小只”首亮相」(2025年8月20日)
- 科技日報(中国科技網)「美丽中国行·探访大熊猫国家公园丨专家详解:大熊猫如何“相亲”」(2026年6月3日)
- 石家荘市動物園「全国科普日动物科普第四弹:大熊猫的五个冷知识」(2023年9月21日)
- 東京動物園協会「ジャイアントパンダを知ろう!」(上野動物園)
- 東京動物園協会「ジャイアントパンダ」(上野動物園 生き物図鑑)
- 東京動物園協会「ジャイアントパンダ、交尾を確認」(2017年2月27日)
- 東京都「ジャイアントパンダの交尾行動を確認」(2021年3月6日)
- アドベンチャーワールド「ジャイアントパンダの赤ちゃん NEWS 9月12日(水)29日齢」(2018年9月12日)
- アドベンチャーワールド「ジャイアントパンダの発情と交配」(ジャイアントパンダ保護共同プロジェクトサイト)
- プレジデントオンライン「発情期にはヤギのように「メェ~」と鳴く…日本でいちばんパンダを育てる動物園が知る「珍獣」の意外な生態」(2023年2月11日)
- ニッポン放送 NEWS ONLINE「パンダの“しっぽ”は「白」?「黒」? どっちだっけ?」(2023年2月)
- フジテレビ「坂上どうぶつ王国」(2020年7月31日放送)
- 国立民族学博物館「パンダのしっぽは白か黒か」(国立民族学博物館調査報告64、2006年)
- Smithsonian’s National Zoo「Giant panda」
- Smithsonian’s National Zoo「#PandaStory: Cub Day 19」(2020年9月9日)
- Smithsonian’s National Zoo「Flirting Like a Panda: Spring Sparks for Bao Li and Qing Bao at National Zoo」(2026年3月27日)
- Smithsonian’s National Zoo「Red panda」
- Smithsonian’s National Zoo「Meet Red Pandas Asa and Chris-Anne」
- San Diego Zoo「Giant Panda」
- Tiergarten Schönbrunn「Diary of the panda twins」(2016年)
- D. Dwight Davis「The Giant Panda: A Morphological Study of Evolutionary Mechanisms」(Fieldiana: Zoology Memoirs 3、1964年)
- 四川動物「圈养雌性大熊猫发情及排卵监测方法论述及展望」(2022年)
- 生物多様性「王朗自然保护区中大熊猫发情场的嗅味树和嗅味标记调查」(2005年)







